採用競合分析のやり方|候補者は自社と他社をどこで比較しているのか

採用DX

公開日:2026年8月2日

企業ブランドや知名度、待遇は、候補者の意思決定に影響する重要な要素です。

しかし、採用は市場全体の平均と自社を比べるものではありません。採用したい候補者にとって、実際の比較対象となっている企業との競争です。

避けたいのは、候補者がどのような観点で企業を比較しているかを把握しないまま、情報不足や伝え方によって採用競合に負けることです。

この記事では、採用競合との情報比較を行う方法を解説します。

※本記事は、採用競合との比較や採用情報の見直しを検討している企業向けに、キャリアデータ総研編集部が独自に整理したものです。記事内では、当メディアの運営会社である株式会社JOPPOの関連サービスを紹介しています。外部資料へのリンクは、公開情報を確認するための通常リンクであり、広告リンクではありません。


この記事でわかること

  • 採用競合分析とは何か
  • 候補者の意思決定に関わる5つの因子
  • 各因子を評価する際の考え方
  • 採用サイト・求人情報・口コミなどの比較方法
  • 分析結果を採用活動の改善へ反映する方法

採用競合分析とは

採用競合分析とは、候補者が実際に比較している企業を対象に、自社と採用競合が候補者からどのように見えているかを分析する取り組みです。

確認するのは、自社の強みが候補者の選択理由として伝わっているか、応募の判断に必要な情報が不足していないか、内定承諾の決め手となる情報が十分に伝わっているかです。

採用競合は、必ずしも事業上の競合と一致するわけではありません。業界が異なっていても、同じ職種や人材要件、勤務地、働き方で候補者を採用していれば、比較対象になることがあります。

また、採用競合分析は、幅広い企業を対象に総合順位をつけるものでもありません。採用したい候補者が実際に比較している企業群を定め、その企業との間で候補者の意思決定に影響する情報を比較します。

企業ブランドや事業の安定性、知名度、将来性なども、候補者の判断に影響します。一方で、採用競合分析では、採用活動の中で具体化・改善できる因子を中心に評価することが重要です。

自社の採用活動全体を候補者視点で確認したい場合は、関連記事「採用力診断とは?候補者から見た自社の採用競争力をチェックする20項目」も参考になります。


候補者の意思決定に関わる5つの因子

採用競合分析では、候補者の意思決定に関わる情報を、次の5つの因子に整理します。

因子評価項目
仕事職務内容の解像度、裁量・決定権、会議・拘束時間
組織・人上司・社員の質、風通し・心理的安全性、文化・バリュー浸透
成長スキル獲得、数年後の見通し、報酬の見通し
働き方残業実態、有休・休暇取得、柔軟な働き方
報酬給与水準、評価の透明性、手当・補助

仕事

仕事因子では、候補者が入社後の仕事内容をどれだけ具体的に想像できるか、その仕事に魅力や納得感を持てるかを評価します。

職務内容の解像度

仕事内容、担当領域、配属後の役割、業務の具体性が明確に伝わっているかを確認します。

「営業職」「企画職」「エンジニア」といった職種名だけでは、候補者は実際の仕事を判断できません。

担当する顧客やサービス、業務範囲、チーム体制、一日の流れなど、入社後の仕事を具体的に想像できる情報が必要です。

裁量・決定権

若手社員や対象職種に対して、どの程度の裁量、意思決定機会、挑戦機会があるかを確認します。

「若手から活躍できる」「裁量が大きい」といった表現だけではなく、実際にどのような判断を任されるのか、どこまで責任を持つのかが分かる情報になっているかがポイントです。

会議・拘束時間

業務遂行における会議、調整、承認など、実際の仕事の進め方に関する情報を確認します。


組織・人

組織・人因子では、候補者が一緒に働く人や組織文化に対して、安心感、魅力、納得感を持てるかを評価します。

候補者が、誰とどのように働くのかを想像できる情報になっているかが重要です。

上司・社員の質

上司、同僚、社員の能力、人柄、マネジメント、育成姿勢に関する情報を確認します。

風通し・心理的安全性

意見を言いやすい環境があるか、若手や新入社員にも発言機会があるか、組織内のコミュニケーションが透明かを確認します。

文化・バリュー浸透

企業理念、行動指針、カルチャーが、実際の仕事や組織運営にどの程度浸透しているかを確認します。


成長

成長因子では、候補者が入社後にスキル、経験、市場価値を高められると感じられるかを評価します。

スキル獲得

入社後にどのようなスキル、専門性、業務経験を得られるかが明確かを確認します。

研修制度の有無だけでなく、実際の仕事を通じて身につく能力や、担当できるプロジェクトの内容まで確認します。

数年後の見通し

入社後3〜5年程度のキャリア展望、配属可能性、役割の変化、成長ステップが見えているかを確認します。

「多様なキャリアがあります」という説明だけではなく、実際の社員事例や異動、昇格、専門職としてのキャリアなどが示されているかがポイントです。

報酬の見通し

成果や成長に応じて、昇給、昇格、報酬がどのように変化するかを確認します。

現在の給与だけでなく、数年後の報酬を候補者がどの程度予測できるかも、成長に関する意思決定へ影響します。


働き方

働き方因子では、候補者が入社後の生活、勤務環境、柔軟性に対して納得できるかを評価します。

残業実態

残業時間、繁忙期、業務負荷、休日対応などの実態を確認します。

平均残業時間だけではなく、職種や部署、時期による違いがある場合は、その条件も含めて説明できているかを評価します。

有休・休暇取得

有給休暇や各種休暇制度だけでなく、実際に取得しやすい環境か、どの程度利用されているかを確認します。

制度として存在することと、実際に利用できることを分けて評価する必要があります。

柔軟な働き方

リモートワーク、フレックスタイム、勤務地、勤務時間などの柔軟性と、その運用実態を確認します。

制度名だけでなく、利用できる対象者、頻度、条件、部署ごとの違いが明確になっているかがポイントです。


報酬

報酬因子では、給与、評価、手当などの金銭的条件が、候補者の意思決定にどのように影響するかを評価します。

給与水準

初任給、想定年収、職種別報酬、採用競合と比較した給与水準を確認します。

単に市場平均と比較するのではなく、採用したい候補者が実際に比較している企業との間で、どのように見えているかを評価します。

評価の透明性

評価基準、昇給・昇格のルール、評価の頻度、フィードバック方法などを確認します。

給与額だけでなく、成果や貢献がどのように評価されるかに候補者が納得できるかも重要です。

手当・補助

住宅補助、通勤手当、福利厚生、学習支援、資格取得支援など、給与以外の経済的支援を確認します。

制度の種類だけでなく、対象者や支給条件、利用実態まで含めて評価します。


各因子を4つの視点から評価する

5つの因子と15の評価項目は、主に次の4つの視点から評価します。

評価の視点確認する内容
魅力度採用したい候補者にとって、どの程度魅力的に見えるか
実態公式情報や外部情報から、実際の状態をどこまで確認できるか
乖離リスク候補者の期待と入社後の実態に差が生じる可能性があるか
意思決定影響度応募、選考継続、内定承諾にどの程度影響する項目か

例えば、リモートワーク制度がある場合でも、それだけで高い評価になるわけではありません。

採用したい候補者がリモートワークを重視しているか、実際にどの程度利用されているか、募集時の説明と配属後の運用に差がないかを確認します。

給与水準についても同様です。金額の高低だけでなく、採用競合との比較、候補者の期待、評価制度の透明性、将来の報酬見通しを含めて評価します。


候補者が接触する情報を比較する

採用競合分析では、社内に存在する情報ではなく、候補者が実際に取得できる情報を比較します。

主な情報源は次のとおりです。

  • 企業公式サイト
  • 採用サイト
  • 求人媒体の求人情報
  • スカウト文面
  • 会社説明会資料
  • 社員インタビュー
  • 採用広報記事
  • 口コミサイト
  • SNS
  • 検索結果
  • 生成AIによる企業情報の要約
  • 選考中に人事や面接官から伝えられる情報

マイナビが2026年卒の大学生・大学院生を対象に実施した調査では、70.6%が、企業ホームページや就職情報サイトなどの公式情報以外に、口コミサイトやSNS投稿などの非公式情報を確認していました。

候補者は、企業が用意した公式情報だけではなく、口コミやSNS、検索結果、生成AIなどの情報も組み合わせながら企業を理解しています。

これらの情報が公式サイトや採用資料で十分に説明されていない場合、候補者は外部情報から実態を推測することになります。

採用競合との比較では、明確なネガティブ情報だけでなく、仕事内容や職場環境、働き方などを判断できないこと自体が、採用競合に負ける要因になります。

生成AIを使った企業研究や情報比較については、関連記事「就活生がAIで企業を調べる時代へ。採用サイトに必要な「公式情報」とは」でも解説しています。

事実・傾向・仮説を分けて整理する

情報源によって、内容の確かさや扱い方は異なります。

情報の種類分析での扱い方
事実公式サイトに掲載された制度、給与、勤務地、選考フロー現在も有効な情報か確認する
傾向複数の口コミで共通して言及されている内容投稿時期や所属部門を確認する
仮説一部の投稿や断片的な情報から考えられる可能性社内情報や候補者の声で追加確認する

口コミやSNSの投稿は、投稿者個人の経験や主観に基づくものです。特定の投稿を、そのまま企業全体の実態として扱うことはできません。

一方で、候補者がどのような疑問や懸念を持ちやすいかを把握する材料にはなります。

外部情報を否定するのではなく、候補者が接触する情報の一つとして確認し、公式情報で説明すべき内容が不足していないかを分析します。


採用競合分析の進め方

採用競合分析は、次の5つの手順で進めます。

1. 対象となる候補者と採用競合を決める

まず、どの職種・候補者層を分析するのかを決めます。

同じ企業でも、新卒総合職、技術職、中途営業職、エンジニアでは、比較される企業や重視される情報が異なります。

応募者の併願先、辞退時に挙がった企業、面接や面談で候補者から出た企業名などを参考に、比較対象を設定します。

2. 候補者が取得できる情報を収集する

採用サイト、求人票、社員インタビュー、会社説明資料、口コミなどを確認します。

社内では共有されていても、候補者から見えない情報は、候補者の比較材料にはなりません。社内情報と候補者が取得できる情報を分けて整理します。

3. 同じ因子と項目で評価する

仕事、組織・人、成長、働き方、報酬の5因子と15項目を使い、各社を同じ基準で確認します。

さらに、魅力度、実態、乖離リスク、意思決定影響度の視点から評価します。

4. 条件面と情報面を分けて比較する

まず、採用競合と比べて、条件や実態にどのような違いがあるかを確認します。

そのうえで、本来は採用として勝負できる実態があるにもかかわらず、情報が不足している項目や、採用競合より具体的に説明できていない項目を整理します。

特に確認したいのは、次のような内容です。

  • 実態はあるが、候補者に伝わっていない情報
  • 採用競合の方が具体的に説明している情報
  • 候補者から繰り返し質問されている情報
  • 公式情報と外部情報にずれがある項目
  • 候補者の期待と入社後の実態に差が生じやすい項目

5. 改善の優先順位を決める

不足している情報をすべて追加する必要はありません。

採用したい候補者にとっての意思決定影響度が高く、採用競合との比較で情報不足が生じている項目から改善します。

応募前の候補者に影響する項目なのか、選考継続や内定承諾に影響する項目なのかによって、改善する採用接点も変わります。


採用競合比較シートの例

簡易的に比較する場合は、次のような表を使えます。

因子・評価項目自社競合A競合B意思決定影響度
職務内容の解像度
裁量・決定権
会議・拘束時間
上司・社員の質
風通し・心理的安全性
文化・バリュー浸透
スキル獲得
数年後の見通し
報酬の見通し
残業実態
有休・休暇取得
柔軟な働き方
給与水準
評価の透明性
手当・補助

単に情報があるか、ないかだけでなく、候補者にとっての魅力度、実態との整合性、期待との乖離リスク、意思決定への影響を記録します。


分析結果を採用活動へ反映する

採用競合分析の結果は、次のような採用接点へ反映できます。

  • 採用サイトの情報追加・更新
  • 求人票の仕事内容や募集背景の具体化
  • 採用広報で発信するテーマの選定
  • スカウト文面で伝える情報の見直し
  • 会社説明会の内容や構成の改善
  • 面接官が候補者へ伝える情報の整理
  • 内定者フォローで確認する項目の設定
  • 候補者から繰り返し聞かれる質問への対応

例えば、採用したい候補者が成長環境を重視している一方で、自社の情報が研修制度の紹介にとどまっている場合は、実際の仕事、習得できるスキル、数年後の役割、社員のキャリア事例などを追加します。

柔軟な働き方について制度の名称だけが掲載されている場合は、対象者、利用条件、実際の運用方法を整理します。

採用競合の表現を、そのまま模倣する必要はありません。競合に合わせるために、実態以上の魅力を伝えることも避ける必要があります。

採用競合分析の目的は、自社を実態以上に良く見せることではありません。

自社が採用として勝負できる内容を、候補者が比較・判断できる情報として整えることです。

求人掲載やスカウトで候補者との接点はあるものの、応募につながっていない場合は、関連記事「求人掲載・スカウトで接点はあるのに応募が来ない理由|候補者に届く採用情報とは」も参考になります。


採用競合分析の確認ポイント

企業全体のランキングにしない

分析対象は、採用市場全体や幅広い企業との比較ではありません。

採用したい候補者から見た、自社と採用競合との比較です。

職種や候補者層が変われば、採用競合も、各因子の意思決定影響度も変わります。

ブランドと採用情報を分けて考える

企業ブランド、知名度、事業規模などは、候補者の意思決定に影響します。

一方で、仕事内容、組織、成長環境、働き方、報酬に関する情報は、採用活動の中で具体化し、改善できます。

ブランドや条件で採用競合に負けたことと、本来伝えられる情報を十分に伝えられずに負けたことは、分けて考える必要があります。

外部情報を事実として断定しない

口コミやSNSは、候補者の疑問や懸念を把握する参考になりますが、企業全体の実態を示すものとは限りません。

情報の投稿時期、所属部門、立場などを確認し、事実、傾向、仮説を分けて扱います。

AIの分析結果をそのまま使わない

生成AIは、複数企業の情報整理や比較、共通点の抽出に活用できます。

一方で、情報源の読み違いや推測、古い情報が含まれる可能性があります。

最終的には、公式情報、元の情報源、社内の実態を確認したうえで判断します。

定期的に見直す

採用サイト、求人情報、口コミ、採用競合の発信内容は変化します。

採用年度や半期などの区切りで再確認し、現在の採用市場や候補者の関心を反映します。


まとめ

採用は、市場全体の平均や総合順位との競争ではありません。

自社が採用したい候補者にとって、実際の比較対象となっている採用競合との間で、何を理由に選ばれるかという競争です。

採用競合分析では、仕事、組織・人、成長、働き方、報酬の5つの意思決定因子を、同じ基準で比較します。

重要なのは、本来は採用として勝負できる内容があるにもかかわらず、情報不足や伝え方によって採用競合に負けていないかを確認することです。

自社の実態や強みを、候補者が比較・判断できる情報として整えることが、採用競合分析の目的です。


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参考資料

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